発表スライドにこだわろう
この記事はeeic Advent Calendar 2017の12日目の記事として書かれたものです。
はじめに
はじめまして、EEIC2014のpstと申します。
現在は情報理工学系研究科電子情報学専攻の修士課程2年をやっています。
博士後期課程には進まない予定で、来年度から社会に出ます。
さて、今回、『発表スライドにこだわろう』というタイトルで記事を書こうと思います。
B4からM2まで、研究の学内発表や対外発表をやってきたのですが、発表スライドはある程度労力をかけて作ってきました。
そこで、それなりのこだわりが溜まってきたので、大学を出て発表スライドを作る機会が少なくなる前に書き残しておこうと思います。
一つ注意してほしいのは、これから書くことが絶対正しいというではなく、ただ僕が修士課程2年までに辿り着いた境地であるということです。
なぜ発表スライドにこだわるのか
「人は見た目が全てです。人の内面の全てが外見に出ているのよ。」
リアル・クローズで神保美姫さんが放った名言ですね。
発表スライドについても同じことが言えるのではないでしょうか。
発表スライドに研究の完成度や研究に対する真摯さなどが表れると。
…ここまで大げさなものではないかもしれませんが、やはり発表の場というのは自分の研究を伝える貴重の場であり、フィードバックももらえるので、できる限り研究内容が正確に伝わるようにしたいものです。
そのために、発表スライドをわかりやすくするというのが発表スライドにこだわる理由です。
※ここでは発表スライドについてのみ言及していますが、話し方、姿勢なども大事だと思います。
私は輪講や学会で他の人の発表を聞いている時、発表スライドがわかりにくかったり、明らかに発表練習してなさそうだと、聞く気がほとんどなくなります。
スライドデザインの参考になるもの
基本的なところから全て語っていたらクリスマスが来てしまうので、ここは私が参考にした書籍やサイトを紹介するだけにします。
伝わるデザイン|研究発表のユニバーサルデザイン
「スライド デザイン」とかでGoogle検索すると一番上に出てくるであろうサイト。
スライド以外の発表媒体のデザインについても書いてあります。
書体の選び方、行間の広さなど、細かいところまでこだわるのに参考になります。
書籍版もあり、こちらのほうが詳しく書いてあります。
見やすいプレゼン資料の作り方 - リニューアル増量版
おそらく自分が一番参考にしている資料。
スライドデザインについてこれだけの量のスライドで説明している資料は他にないのではないでしょうか?
資料がスライドなので、そのまま真似して良い資料が作れるのがいいところです。
※筆者のMorishigeさんがどこかのサイトでPower Pointのテンプレートを売っていたので、しばらく買って使っていたのですが、そのサイトは見つけられませんでした。
※※そのテンプレートを専攻の先輩が輪講で使っているのを見ました。
『研究発表のためのスライドデザイン』(宮野 公樹):ブルーバックス|講談社BOOK倶楽部
スライドデザインだけでなく、スライド構成をどのようにするかといったことについてもたくさん書いてあります。
研究発表で何を伝えるべきかということを知るために、学部生のときに読むといいかもしれないです。
個人的なこだわり
さて、ここからは個人的なこだわりを主張していきたいと思います。
前節で紹介した書籍の内容と重複することもあると思います。
あと、こだわりじゃなくてただの手順だったりするのもあります。
あらかじめ断っておきますが、私のスライド作成環境はPowerPoint 2016 for Macであり、それが前提となっているものも出てくると思います。
最初にだいたいの構成を決める
私はスライドを作る際に、まず初めにスライドの構成を決めます(これは普通かと思いますが)。
白紙を用意してきて、どういう順番で話していくか、どの内容(背景、関連研究、提案手法など)に何枚程度のスライドを割くか整理します。
後から変更可能なので、きっちり決める必要はないですが、この作業をやっておくとスライド作りがスムーズにいきます。
映像作品を作る時に絵コンテを書くようなものですかね(映像作品作ったことないですし、絵コンテも書いたことないです、すみません)。
また、私の場合、経験的に発表時間の1.3倍程度のスライド(発表時間が12分なら16枚とか)を作ると分量がいい感じになることがわかっているので、それを目安にしたりもします。
スライドサイズ
基本的には標準(4:3)にしましょう。
Power Point 2016 for Macではデザインタブに設定があります。
eeic Advent Calendar 2016で、学科の先輩が書いていたことに逆らうようで畏れ多い(その先輩が素晴らしいスライドを作ることを知っている)のですが、私は4:3がいいと思います。
様々な施設に備わっているスクリーンのサイズは4:3なことが多いです。そのため、スクリーンを目一杯使える点で4:3が有利だからです。また、他のサイズにした際にスクリーンに余白ができるのが個人的にあまり好きではないです。
理由が上記なので、壁に向かって投影するなど、スクリーンのアスペクト比という制限がない場所(例えばI-REF棟のHilobby)ではなんでもいいと思います。
私はそういうところではワイド画面(16:9)を選びたいです。かっこいい気がするので。
配色
スライドで使う色はスライドの印象を決めるので、注意して選びたいです。
Power Point 2016 for Macでは、デザイン押して、右の方にある▼を押すと色の設定が出てきます。ここで『色のカスタマイズ…』を押して、使う色を決めていきます。
まず、私は配色|伝わるデザインに書いてある
- ベースカラー、メインカラー、アクセントカラーを決める
- 彩度の高すぎる標準色は避ける
- 真っ黒でない方が読みやすい
を意識しています。
ここにいくつかコメントを加えたいと思います。
ベースカラー、メインカラー、アクセントカラーのいい組み合わせが決まらないときは、「スライド 配色」とかでGoogle検索するといくつもパターンが出てくるので、お気に入りのを採用するといいと思います。カラーコードをコピーするか、スポイトツールみたいの(?)で色を拾ってきましょう。
また、Material Designで使われる色のカラーコードをクリックだけで拾ってこられるサイトがあるので、ここも使えると思います。
さらに発展的な色の選び方として、Adobe Color CCでは好きな画像からカラーパレットを作れます。
ここで『俺の嫁』の画像から配色を決めるとノリノリでスライドが作れるかもしれません。
文字は真っ黒でないほうが読みやすい、については完全には同意ではありません。
ディスプレイで#ffffffの白が背景で#000000の黒が文字を見せられると、コントラストがきつく感じるのですが、明るい部屋でプロジェクターを使ってプレゼンテーションをする際は、部屋の照明によって文字が少し薄まります。
そのため、環境によっては文字色は真っ黒の方がいいのではないかと思います。
実際のところは、私はグレーやミッドナイトブルー(#001E43)をベースにした色を文字に使うことが多く、真っ黒を使わないことが多いのですが。
コントラストを抑えるためにはスライドの背景色を真っ白から変えることも有効です。試してみてください。
フォント
使うフォントは、欧文ではサンセリフ体、和文ではゴシック体を使うといいと思います(上級者を除く)。
テーマのフォント設定もデザインタブにあるのですが、Power Point 2016 for Macではなぜかユーザー定義のテーマのフォントがアプリケーション内で設定できません。
設定したい場合はxmlファイルを書いて適切に設置することで実現できます。
フォントサイズは、投影した時に会場のほとんどの人が読めるようなサイズであればいいと思います。
さて、フォントについてですが、欧文フォントと和文フォントを組み合わせて使うとき、2つのフォントの大きさや太さやベースラインの高さが違って気になることがあります。ここは調整したいです。
例えば、Helvetica Neueとヒラギノ角ゴシックを組み合わせたくなった時、上の画像の上はHelvetica NeueをLightで44ptかつヒラギノ角ゴシックをW3で40ptにしたもので、下はHelvetica NeueをRegularで40ptかつヒラギノ角ゴシックをW3で40ptにしたものです。上のほうがバランスがいいように見えませんか?
また、欧文フォントがプロポーショナルであるのに対して和文がプロポーショナルでないために、日本語の文字の間隔が広いのが気になる場合は、文字の間隔を調節するといいと思います。
和文には全角記号を使う
日本語には全角記号を使いましょう。
半角記号と全角記号では文字のベースラインが違います。
(半角カッコ)(全角カッコ)
半角カッコの方はカッコが文字に対して下がってしまっているのがわかると思います。
しかし、全角記号は余白部分が多いのが嫌だという人もいると思います。その時は、文字の間隔の調整で対応するといいと思います。
ページ番号
表示しましょう。
単位はローマン体に
すでに紹介した学科の先輩が書いた記事にも書かれていますが、単位はローマン体で表記しましょう。そして、単位の前にスペースを入れましょう。
ここで、個人的な補足を。
私は、単位の前のスペースをできれば普通の半角スペースより狭くいれたいです(LaTeXで\,を使うスペースの幅がちょうどいい)。
こういうときも、文字の間隔の調節で詰めてあげるといい感じになります。
文字の間隔・行の間隔を調整する
タイトルの文字の間隔を広くしたり、フォントサイズによって行の間隔を広くしてあげるといい感じになったりします。
適度な間隔に調整したいです。
単語が切れないように改行する
このように、『エネルギー』の途中で改行してたりすると「気持ち悪いな」と思うので、なんとかフォントサイズや文章を調整します。
※文章はeeic (東京大学工学部電気電子・電子情報工学科) Advent Calendar 2017 - Qiitaから引用
生産技術研究所のトイレの張り紙はペーパーを半角にすることで折り返し部分を綺麗にしていました。
タイトルスライドに意味のあるタイトルを
研究室内のミーティングとかだと、意味のないタイトルを見かけたりしますが、あまり好きではないです。
「いや…ミーティングって…」って思ってしまいます。
せめて『〇〇実験の報告』みたいな内容がわかるものであってほしいです。
あまり意味のない目次は作らない
このスライドを見せられて、
「発表の流れです。まず背景を話して、次に関連研究を紹介し、提案手法について述べた後、評価をしてまとめます。」
みたいなのを一瞬で話されて次のスライドに移られると、このスライド必要だったのかなあって思います。
もうちょっと内容を詳細に書くか、目次のスライド省くかどっちかがいいんじゃないかなって思います。
ご清聴ありがとうございましたスライド
意見が分かれるやつです。
発表の最後に「ご清聴ありがとうございました」だけ書いたスライド。
あれはいるのかなと。
入れない派
- 質疑応答に入るときに、まとめのスライドが残っていたほうがよい
- わざわざスライドに載せなくても言うだけで十分だと思う
入れる派
- 自分の写真や連絡先と一緒に載せるとかっこいい
- 発表の締めがわかりやすい
入れない派と入れる派がいるのですが、彼らの支持する理由は思いつく感じこんなもんなんじゃないかと。
ご清聴ありがとうございましたスライドについて考えたことがない人は、(それほどの価値があるものかわからないですが)一度考えてみてもいいんじゃないかと思います。
ちなみに私は入れない派です。
数式で聴衆を置いてけぼりにしない
輪講とかで数式がたくさん入ったスライドを結構速いスピードでめくられると、「もうわからん!」ってなるので、私はできる限り数式を並べて聴衆を置いてけぼりにしないように努めています。
例えば、数式とともに数式の意味を文章で書いてあげたり、図解してあげたりするとわかりやすくなるかなと思ってやっています。
何度も発表練習をする
一番大事なやつです。
発表は練習すればするほどうまくなると思っているので、僕はできるだけ練習をして本番に臨みます。
練習をすることで、スライド構成の改善点が見つかったり、わかりにくそうなところがわかったりするので、「練習はしとくものだな」と思います。
研究室内のミーティングとか、カジュアルなものはスライドを見返す程度ですが。
おわりに
発表スライドづくりについて思うがままに書いてきました。いかがだったでしょうか。
最初に書いたように、ここに書いたことが正しくて、絶対にこうしなくてはいけないということではないです。
「私はこういうところにこだわっているんだ。」という主張です。自己満足です。
こういう細かいところに労力を割くのが楽しいんです。好きなんです。
なので、皆さんが他にこんなところにこだわってるとかあったらコメントしていただけると嬉しいです。良さげなのがあれば喜んで使わせていただきます。
以上です。ありがとうございました。